しみず建築工房の7つのコンセプトです。
1.合板やボードに頼らない家づくり(普通の価格でつくる無垢の木の家)
自然素材や木の家づくりを謳う建築の多くが、上棟し工事が進むにつれて美しい柱や梁の木造架構に構造用合板が貼られ、新建材のボードで覆われたりしていくのを見ていて、何とも言えない違和感を覚えていました。
現代の住宅を合板やボードに頼らず自然素材だけでつくることはできないものだろうか?
昔から森林国日本でその土地の木材だけを使って、神社や宝庫など大切な建築を造ってきた「板倉構法」は一つの優れた解答です。板倉構法は無垢の厚板だけで家の基本構造全てを造るので、「本物の木の家」ができます。昔の民家の土壁も優れた構法ですが、材料の流通や施工技術の面で現代化が難しいものがあります。
板倉構法は無垢の厚板をパネルのように使うので、現代のプレハブ工法に通じていて生産、施工等の現代化が容易でコストダウンにつながります。東日本大震災の仮設住宅にも使われました。ですから本物の無垢の木の家が「普通の価格」でつくることができるのです。
地域材を利用し日本の森を活性化して、自然環境と地域をまもりながら、皆が健康で心地よく暮らせる「板倉の家」です。
2.板倉工法
落とし板倉構法とは溝を彫った柱と柱の間に厚板を落とし込んで壁を造る構法です。厚板は厚さ1寸(3cm)の無垢の板で、家の基本構造の床、屋根、壁を全てこの厚板で構成し細かい部材は使いません。日本の伝統的構法でありながら、2×4構法のように部材種類を限定し合理化した構法です。
板倉のルーツは伊勢神宮や校倉造りの正倉院。古代から厚い無垢の木の優れた性質は穀物や宝物など大切な物の保存に利用されていました。
中部日本各地には様々な板倉が現存し、特に八ヶ岳山麓には多数残っています。
3.断熱・構造強度・耐久性
「板倉の家」では、この構造体に「外断熱」を施し、それぞれの地域に合った住環境性能にしています。もともと無垢の厚板は断熱性能に加え、蓄熱や吸放湿の性能が新建材のボードや合板よりはるかに優れています。その基本性能に加え、外断熱材によって現代の温熱性能を確保し、標高1000M以上の寒冷地でも板倉の家が建ち快適な暮らしを実現しています。
また、「板倉の家」は大臣認定の板倉耐力壁を使い現代の構造計画によって充分な強度をもたせています。板倉の落とし板壁は無垢の厚板のため潰れることがありません。無垢の木材を表わしで使うことで木の呼吸を妨げないため構造体が長持ちし、永く住み継ぐことのできる耐久性のある建築となっています。
4.自然素材(地産地消、自然の循環)
遠い将来壊されても産業廃棄物とならず、放射性廃棄物のように子孫にツケを残さない建築としたい。それには土に還る材料、地球の物質循環に沿った素材を使っていくこと。そして遠くの地のものでなく、なるべく近くで採れる本物の自然素材を使いたい。それはその地の気候風土に合い、より健康的であり、より長持ちする家となります。「板倉の家」は基本構造全てを地域の無垢材で造ることができるので住まい手にも、建物にも、地球環境にもよい影響を与えます。
5.完成しない家(自分で完成させる家)
家は自分でつくるもの。考えに考え全てを造り込み完成された家もよいけれど、人間は徐々に変わっていくものです。特に新しい暮らしを始めると、新しい発見が誰にでもあり、その経験により考え方や好みも変化していきます。また、年月と共に家族構成や身体機能も変化し、初めは完璧な家でも自分に合わない部分や無駄な部分も出てくるかもしれません。そんな時、手軽に自分で手を加えられる家、住まい手の変化を受け入れてくれる懐の深い包容力の大きな家がよいと思います。
「板倉の家」は、構造材が表しで無垢の厚板に囲まれているので下地などを探すことなく簡単に住まい手が棚や手すりなどをつけることができます。
子供室に間仕切りを加えたり、吹き抜けに床を張るなどの改修工事も容易に出来ます。
6.心地よさのデザイン(工藝、用の美、暮らしの美)
抜群のプロポーションの美しい白い壁と研ぎ澄まされたディテール。空間芸術としての住宅建築には建築史に残る数々の傑作があります。また、メーカー住宅と言われるような現代住宅は、居住性能と生産効率をとことん追求したものです。さらにその地の風雪に永く耐え、幾度となく改修されながらも今日まで生き残った民家もあります。それぞれが住宅建築の在り方であって、多様性があることは悪いことではありません。
しみず建築工房の目指す住宅建築のデザインは、その地の風土から生まれ、その地の暮らしに根ざし、用に則した健全な美をもつ暮らしの器としての住宅です。そして手仕事の良さを取り入れ、素朴で温かみのある心地よいデザインを目指しています。
人の好みは十人十色、でも心地よさは身体が暗黙のうちに感じとるものだから個人の好みをこえた共通性、普遍性がある。デザインを意識せずに心地よく暮らせる家。
「芸術作品でもなく工業製品でもない」よくできた普通の家。心地よく暮らせる「板倉の家」です。
7.隠し事のない家(構造体を隠さない全て現しの家)
百聞は一見に如かず。言葉で説明されるより実際に見えることが一番安心です。全て現しの骨組みは、何が起きても目で見て確認できる。仕上げを壊さずにすぐ修理できる。台風や地震から大切な家族を守ってくれる家。完成した時は防水や耐震性が完全でも、長い年月の間に何が起こるか分かりません。シロアリが突然やってくるかもしれない。気が付かない小さな穴から雨水が長年侵入しているかもしれない。100%完全な家は出来ないのですから、何か起これば発見しやすく直しやすい家が良いのです。
現代の家のほとんどが、天井や壁はボードの上にビニールクロスや塗り壁仕上げです。これだと、天井内や壁内で何か事故が起こっても全く分かりません。気が付いた時には大変な事が起きているかもしれません。
「板倉の家」の架構は全て現し。完成後でも柱や梁、壁の厚板も全て目で見ることができます。不具合を発見しやすく、床下も簡単にもぐって中の様子を確認することができます。大工は自分の仕事が一生見られるので手抜き工事ができません。プライドを持って丁寧な仕事をしてくれるので、心のこもった家となります。