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2023年4月24日

「いたくら Vol.09 」

カテゴリー: 設計について

日本板倉建築協会の会誌「いたくら」の9号が刊行されました。協会が出来て毎年発行しているもので、早いものでもう9年が経ちました。その間、板倉の家づくりも少しづつ広がりを見せています。

今回は特集として「信州の板倉」を取り上げています。薪ストーブはもちろんペチカなどの寒冷地の暖房方式や断熱等についての工夫や課題について取り上げています。その中で、私の事務所では、駒ケ根市の「MSガーデンハウス」と御代田町の「塩野の家」を掲載しました。

「MSガーデンハウス」は、建主が所有する山の木だけで造られた板倉の離れ住宅です。山の木の伐採、製材、天然乾燥、建設と小さな建築ですが完成までに丸2年以上かかりました。今も大切に使っていただいています。10年の歳月を経て板倉の壁の厚板や軸組の木の色艶も落ち着いてきました。

「塩野の家」の中庭

「塩野の家」は、建築家 篠原一男 の初期の傑作「土間の家」の所有者の新たな住まい。同じ敷地に「土間の家」と共に中庭を構成するように配置されています。こちらはカラマツで造られた板倉の家です。間もなく竣工してから10年がたちますが、内外とも本当に良い飴色の建築になってきました。

是非、本文をご覧ください。ご希望であれば冊子をお送りしますので、ホームページよりお知らせください。

 

 

2023年2月19日

冬の庭での出来事

カテゴリー: 暮らし

突然「ボッン」という大きな音が我が家の土間のあたりで鳴り響きました。何の音だ!屋根の雪の塊が瓦の上を滑って落ちた音?でもないし(もう屋根に雪はない)、家の中も物が落ちたようなことはなく、何も変わってはいない?分かった!土間のガラス引戸の外に小さな鳥がひっくり返っている。小鳥がガラス戸に激突したのでした。最近はなくなったのですが、以前は庭に来ている鳥がガラス戸を認識できず激突することが数回ありました。今回は網戸を開けていたので庭の残雪がガラス戸に映り込み庭側から見ると庭が家の中にも続いているように見えていました。

 上の写真は、脳震とうを起こし気絶してひっくり返っていましたが、しばらく経って小鳥が起き上がったところ。

どうやら骨折もなく無事らしいけれど、まだ動けません。

図鑑を調べてみると「シメ」というアトリ科の冬の漂鳥とありました。スズメよりちょっと大きなずんぐりした体形。北海道で繁殖し冬は南の暖かい地方へ移動する、国内で短距離の渡りをする鳥でした。よく見られる鳥らしいですが、私は初めて知りました。野良猫などに狙われないよう見張りながら外に置いておくと、しばらくしてまず庭の木の枝に飛んでいきました。大きな怪我もなく飛べるようです。そのうちにどこかに飛んでいきました。良かった良かった。ガラス戸は網戸や障子を閉めて、鳥がガラス戸を意識できるよう皆さんも気を付けましょう。

2022年12月31日

2022年も大晦日になりました。

カテゴリー: 設計について

令和4年 もあと僅か。アッという間に1年が過ぎてしまいました。10月以降、月末になると忙しくなり暫くHPの更新が疎かになりました。10月以降お伝え出来なかったものをまとめます。

7月の記事「板倉の家 上棟」の家は、無事竣工しました。なだらかな丘の上に敷地の高低差に沿ってスキップフロアで構成された住宅です。造成などせず敷地の自然地形を尊重し、なるべくそれを壊さないように考えられた建築です。人工的な敷地造成、特に盛土などは年月が経っても不安定なものなのでやむを得ない場合以外はなるべく避けたいものです。今後、竣工写真が出来ましたら改めてお伝えします。

また、もう一つコンパクトな平屋の板倉の家が上棟しました。

この住宅もちょっと敷地がアプローチより上がっていて高い所にあります。そのため基礎の一部を深くして南側の擁壁に建物の荷重を掛けないように考えられています。北側の母屋の陽当りを確保し視覚的な圧迫感を和らげるため、また母屋への出入りの車に、この建物の軒先が邪魔にならないよう変形した寄棟の屋根の形となっています。年明けに造作工事に入っていきます。

2022年は国内的にも世界的にも激動と言ってよいほどの事象が続きました。来年こそは穏やかな一年となりますよう祈りたいと思います。

それではよいお年を。

 

2022年9月29日

木の家 完成

カテゴリー: 設計について

2月に上棟の様子をお知らせした木の家の完成です。

コンパクトな総2階建ての家でも全体的に高さを抑え安定した好ましいプロポーションとし、周囲に威圧感を与えないヒューマンスケールの建物です。

自然素材 無垢カラマツ板無塗装の外壁がいい飴色になり周辺の田園風景に調和しています。水に強いカラマツの自然な色ですが周りに木の外壁の家がないので結構目立ちます。塗装も何もしないので、その土地の風雪を受け年月と共にその土地の色に染まり、さらに自然な佇まいの家になっていくことでしょう。

玄関ポーチの風除けは、同じ外壁材を使い編み物のような柔らかい雰囲気に。

玄関は板土間で、泥んこ遊びをした子供の服とか、泥のついた野菜など汚れものを洗うシンクがありテラス戸ですぐ庭へつながります。今回の内装は、針葉樹合板。

キッチンは合板で大工さんが製作したもの。辷出しの窓は、南側の庭の向こうの風景を切り取ります。

広間もテラスを介して庭と繋がり、大きなサッシュで雄大な風景を楽しめます。

階高を抑えた2階は、ロフトのような雰囲気ですが、屋根の形がそのまま現れ空間に変化があるので、あまり狭さを感じません。

内外に木を現した家族と共に時を刻む家です。

2022年7月29日

板倉の家 上棟

カテゴリー: 設計について

板倉構法の家の建て方が始まりました。

土台を敷き柱を建て1階の壁をほぼ落し終えたところです。床の断熱材もすでに敷きこまれています。真ん中の紙で養生された太い通し柱が、家の構造の中心となる大黒柱です。柱や梁、壁の落し板等すべてが無垢の地域材カラマツです。

この家は緩やかな傾斜地に建つので、その傾斜に合わせ手前の部屋部分の床を一段下げたスキップフロアの構成となっています。

床の梁を組み管柱を建て壁の厚板を柱の溝に落とし込んでいきます。壁の厚板は1寸厚(3cm)の無垢材です。ここでは、厚板を4~5枚縦につなぎパネル化したものを落し入れて、1枚ずつ落すよりもスピードアップしています。

床や屋根も同じ無垢の厚板を使って貼ります。同じ規格の厚板を壁や床・屋根等に大量に使うので、材料の種類が減り材料生産と現場施工の効率が上がります。材料の無駄もなくなり無垢材の家としてはコストダウンができます。

厚板を様々に使いまわすことにより細かい下地が不要となり、現しの構造体となるので太い柱・梁だけで家を構成でき、増改築や解体移築も容易となります。

数十年、半世紀後であってもこの家の材料は無駄にならず次の時代に引き継ぐことができ、最後の最後には地球環境を汚すことなく土に還っていきます。

もちろんシックハウスとは無縁で新建材にはない調湿作用が充分働くので、住み心地は抜群。地球にも住まい手にも優しい板倉の家です。

2022年6月30日

百舌鳥の子育て

カテゴリー: 暮らし

毎年6月には我が家の庭で、モズが子育てを行います。なぜか我が家に燕は寄り付きませんが、その代わりモズが巣をつくり子育てをしています。

写真は6月中旬の様子ですが、ヒナはかなり大きくなり小さな巣からはみ出しています。親鳥はつがいで忙しく餌を運んでいて、この数日後には巣立ちをしました。巣立ちをしてもヒナはうまく飛べないので、巣の近くの藪の中にいてまだ親から餌をもらっています。

人間や猫が巣に近づくと親鳥が「チチチチチチッ」とおおきな警戒音で鳴きます。この巣の場所は下の写真の我が家の玄関脇のマサキ生垣の中。昨年は、庭の木に作りましたが今年はまた一昨年と同様玄関の近くの生垣の中に作りました。

モズもツバメと同じで、天敵のヘビやカラスなどから巣を護るためには人間が生活行動している場所の近くのほうが安全と学習したのでしょう。

ツバメは近所の家の軒先などで子育てをしていますが、私の設計した家は、外壁がカラマツ板なので、どうもツバメに嫌われるようです。山の別荘でも、隣の杉の外壁にはキツツキが穴をあけるのに、私の設計した家のカラマツ外壁は何ともありません。カラマツの脂を鳥が嫌うのか、今までに鳥害を受けたことはありません。鳥に理由を聞いてみたいと思っていますが。

モズの子育てが終わると、毎年生垣の剪定を行います。

2022年5月30日

八ッ場ダム

カテゴリー: 暮らし

コロナ禍の移動制限が解除されたので、県境を越え群馬県の八ッ場ダムに行ってきました。

満水になったダム湖は穏やかな様子で、八ッ場ダムのこれまでの困難な道のりを忘れてしまいそうでした。ダムの中のエレベーターで下流側へ降りてダム見上げると、ダム天端にいる人が米粒のように小さく、いかに巨大な人工構造物かがわかります。ダムの下流には景勝地の吾妻峡が少しだけなんとか残されました。

我が家からは比較的近く2020年3月31日に完成していたのですが、コロナ禍で見学に行けませんでした。私が生まれる前の1952年(昭和27年)の計画発表から完成まで、実に68年。吾妻峡や川原湯温泉街を湖底に沈めてようやく完成です。地元住民の方々は、長い反対運動から受け入れまで人生の大半をこのダムに翻弄されました。本体工事が始まろうとしていたやさき、政権交代の民主党の突然の建設中止宣言、そして中止の撤回と最後まで紆余曲折が続きました。

キャスリーン台風による利根川の大氾濫から計画が始まり治水・利水を目的に進められてきましたが、今では首都圏は水余り。日本の高度成長期は終わり、ほんとに現在必要なものなのか?

青函トンネルと同じように巨大インフラ開発は完成までに数十年から半世紀という時間がかかり、その間に国の経済や様々な状況が変わってしまい、当初の目的を果たせない?。

東京の日本橋も上に架かる首都高を撤去し地下にしようとしている時代、アメリカでは古いダムの撤去が始まっている時代、トンネルや橋梁等の土木構造物や水道管のメンテナンスがにわかに問題になり始めた時代にようやく完成した八ッ場ダムです。

八ッ場ダムの上流には有名な草津温泉や活火山の草津白根山ががあります。また、過去に硫黄の鉱山開発もあり、その一帯から流れ出る河川水は、コンクリートや鉄筋を溶かすほどの強酸性で、ダム建設でも問題となりました。そのため草津温泉の下流に強酸性水中和工場があり、中和のため1日60トン?ともいわれる石灰を溶かして河川に投入しているそうです。

これから我々の次の世代に、このダムはどうなっていくのか。穏やかな湖面を眺めながら、色々考えさせられた八ッ場ダムでした。

 

2022年4月26日

花の季節

カテゴリー: 暮らし

4月も後半、春らしくなってきました。急に夏日になったりまた寒くなったりと、よく言われる『三寒四温』とはちょっと違い差が激しすぎるのは、やはり温暖化の影響でしょうか。でも、我が家の周りの草花たちも、やっと春が来たと美しく咲き誇ってくれました。

毎朝の散歩コース山の神の祠の桜は、今年も立派に咲きました。満開の桜を見るとなぜか心が満たされます。やっぱり日本を代表する花ですね。

そしてこちらは我が家の庭のハナモモ。何年か前に鉢植えでもらった木を地植えにしたら、ここまで大きく育ちました。毎年桜に続いて他の草花と共に見事に咲いてくれます。これからしばらく庭では花たちの美しい饗宴が見られます。

2022年2月27日

寒風の中の上棟

カテゴリー: 設計について

2月下旬 少しは暖かくなるはずが今年は例年になく寒く、寒風の中での棟上げとなりました。

基礎は昨年末に出来上がっていたものです。この建物は、板倉ではなく一般的な在来構法です。

しかし、4寸角の丈夫な垂木(登り梁)を使い垂木構造とし、ロフト的な2階として階高を最小限に抑え建物全体を低くしているため、非常に安定した構造体となりました。一般的な在来工法の建物は、上棟したばかりだと少し揺れるのですが、この建物は全く揺れませんでした。

ここに耐震壁を張っていきますので、さらに丈夫な建物となります。板倉ではありませんが、なるべく木のイメージを出すよう屋根や天井は現しの構造体としています。これからサッシュが入り壁が張られていきます。外壁は無垢の地域材カラマツ板なので、この地域に似合った木の家が出来上がるはずです。