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2024年1月24日

2024  新しい年がはじまりました

カテゴリー: 設計について

2024年が始まりました。本年もよろしくお願いします。新年早々、心を痛めるニュースが続きました。改めて、能登半島地震によりお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りし、被災された方々に謹んでお見舞い申し上げます。すでに応急危険度判定などの応援に行った建築士仲間もいます。一日も早く復興できますよう応援していきます。記憶に新しいところでも阪神・淡路大震災、中越地震、東日本大震災、熊本地震と大きな震災が続いていました。改めて、日本列島が地震列島であることを肝に銘じておかなければなりません。日本列島に住んでいる以上、自然災害から安全な場所などどこにもありません。自然を畏敬し、人間としての備えを怠らないようにしましょう。

さて、写真は一昨年に完成していた東御市の住宅です。陽当りがよく眺望も開けた造成地の一角、遠く北アルプスなども見る事が出来ます。板倉構法ではありませんがカラマツ竪羽目板外壁の木をふんだんに使ったコンパクトな家です。

玄関を入ると庭に繋がる厚板の板土間があります。やんちゃな男の子たちの汚れた服もここで脱がせて下洗い。そのほかにも外と内との中間で色々使える便利な土間空間です。内装は,針葉樹合板なので多少の汚れや傷も気になりません。

キッチンと繋がった広間は、大きな開口からゆったりとした田園風景が飛び込み、小さな吹き抜けで2階と繋がり、子供たちの気配も広間に飛び込んできます。この白い壁は、お施主さんが自ら塗った自然素材のクレイペイント。初めての挑戦ですが、プロ並みの出来栄え!

土間から直接入れる手作りキッチン。コンパクトで無駄なし。

水廻りの洗面室も内装は針葉樹合板。実験用洗面器のシンプルな設え。水撥ねしそうな所は、透明の耐水塗料を塗ってあります。

2階には子供たち共用の造り付け勉強机。子供たちが、もう少し大きくなったらそろって勉強してくれるかな?

2階のロフトのような子供部屋。子供たちがも少し成長したら各部屋に仕切りますが、今はみんなでガヤガヤ楽しく使います。

2階の寝室も半ロフトのよう。2階は登り梁構造として生活に支障ない範囲で階高を低くし、構造材を節約し外壁面積を少なくしています。これにより外壁からの熱損失も少なくなりますし、コストダウンにもなります。

お施主さんの植えた樹木がだんだん育っていくと、カラマツ板外壁のこの建物もだんだんとこの地の風景に馴染んでいくことでしょう。その土地の自然の色に染まっていく、よくできた普通の木の家です。

 

2023年12月17日

小さくても豊かな板倉小屋

カテゴリー: 設計について

長閑な田園風景の中、古くからある蔵や納屋と並んで違和感なく周辺環境になじんだ小さな板倉小屋が見えます。6月にお知らせした「板倉の小屋」がお施主さんの工事もほぼ終わりかわいい姿を現しました。

お施主さんセルフビルドのテラスが付き楽しそうな暮らしが見えてきます。

家は小さいけれど充実のエコ設備満載。太陽光パネルはもちろん太陽熱温水器、薪ストーブや灯油併燃薪ボイラ―などをお施主さん工事で装備。しかも、建物は全て自然素材のみでできています。建物本体はもちろん板倉構法で無垢の木材のみ。断熱材も杉板と籾殻を使い、新建材や化学物質は無。将来産業廃棄物となるような素材は極力使わない建築。断熱材が自然素材の為、断熱性能は多少落ちますが居住用エネルギー源が太陽光とバイオマスである木材のみの為、地球に負荷を掛けません。「断熱性能が多少落ちる」と言っても板倉構法の為、温熱計算で扱わない蓄熱性が現代の一般在来工法に比べ非常に大きいので、実用上・感覚的にはこちらの方が温かい。

内部も、杉等の無垢の木材のみ。暖かく清々しく思わず深呼吸したくなり心から安らぎます。3間角の平面にキッチンと水廻り、ロフトが余裕の空間となり狭さを感じさせません。キッチンセットは既製品を使いコスパを追求、必要十分なものに。

薪で沸かす懐かしいステンレス浴槽のある浴室。内装もサワラ無垢材で暖かく、特に床スノコはヒバ厚板で裸足でも冷たくありません。

夕方になると、お施主さん手作りのテラス照明がほんのり温かく人を迎え入れてくれます。

 

2023年8月31日

上山田の家

カテゴリー: 設計について

古い離れ住宅の建替えです。道路より一段上がった陽当りと眺めの良い敷地に、コンパクトな平屋の離れ住宅を造りました。 中庭を挿んで親の住む母屋の南側に、お互いの気配を感じながらも独立した暮らしができるように、また、古いお社がある中庭の清々しさを壊さぬように、そして南側の山の自然を充分楽しめるように計画されています。

周囲に威圧感を与えないようになるべく低く抑えた外観で、温かみのある優しい無垢板・無塗装の外壁です。敷地内への大きな車の出入りに支障が無いよう、アプローチ側の軒高はある程度高く設定しながら、北側の母屋への陽当りを確保し単調な立面とならぬよう検討した結果、屋根の棟が建物平面の対角線上に来る変形した寄棟屋根となりました。

もちろん地域材カラマツの無垢厚板を使った板倉構法で、ほぼ自然素材だけでできています。天井を張らない架構現しの建物で、平屋でも空間的な変化があり圧迫感の無い内部空間です。屋根形状と部屋の平面配置を整合させ空間の重心が低く落ち着きを必要とする和室を屋根の最も低い位置に配置しています。和室には掘り炬燵や思い出の旧家の書院障子をはめた出窓があり内法の高さ寸法に細心の注意を払っています。

 一段高い敷地のため浮遊感のある心地よい大きなテラスからは、南の山の溢れる緑が目の前に迫り毎日過ごす家にいながら、どこか避暑地に来たような開放的な気持ちのさせてくれます。

2023年6月9日

板倉の小屋 完成

カテゴリー: 設計について

コンパクトな板倉の家が完成します。3間角の正方形平面にロフトが付いた小さな小屋的建築です。これからお施主さんが、薪ストーブやテラス、下屋の囲い等セルフビルドで完成させます。

小さいけれど水廻りは全てそろっていて、特にお風呂は太陽熱温水器と灯油併燃薪焚きのボイラーでエコ装備完備。健康的な毎日の暮らしが見えてきそうです。勿論板倉建築で、全て無垢の木で骨格を造っています。さらに、この家は断熱材も自然素材のみ。床や屋根には断熱材として籾殻を入れ、壁には竪木摺を隙間なく貼り、新建材などの工業製品はほとんど使っていません。省エネ基準適合義務付け前の真の健康住宅。自然素材の無垢板や断熱材は、熱伝導率などの断熱計算の数値は低いものの、実際の住み心地は抜群、室温や湿度の変化が穏やかで人間の生理に合います。そして、建設中でも遠い将来朽ち果てても地球環境を汚すことはありません。

工事写真は屋根の断熱材(籾殻)を入れているところ。

室内は無垢の厚板に囲まれシックハウスとは無縁の清々しさ。木の香りに包まれて思わず深呼吸したくなります。浴室も内装は無垢板張りです。壁内には一般的な防水シートは使わず空気層を工夫しています。ステンレス浴槽に木製スノコで清潔、足も冷たくありません。

これから、この家もお施主さんと共に自然な暮らしに磨かれていくことでしょう。数十年後が楽しみな板倉の小屋です。

2023年4月24日

「いたくら Vol.09 」

カテゴリー: 設計について

日本板倉建築協会の会誌「いたくら」の9号が刊行されました。協会が出来て毎年発行しているもので、早いものでもう9年が経ちました。その間、板倉の家づくりも少しづつ広がりを見せています。

今回は特集として「信州の板倉」を取り上げています。薪ストーブはもちろんペチカなどの寒冷地の暖房方式や断熱等についての工夫や課題について取り上げています。その中で、私の事務所では、駒ケ根市の「MSガーデンハウス」と御代田町の「塩野の家」を掲載しました。

「MSガーデンハウス」は、建主が所有する山の木だけで造られた板倉の離れ住宅です。山の木の伐採、製材、天然乾燥、建設と小さな建築ですが完成までに丸2年以上かかりました。今も大切に使っていただいています。10年の歳月を経て板倉の壁の厚板や軸組の木の色艶も落ち着いてきました。

「塩野の家」の中庭

「塩野の家」は、建築家 篠原一男 の初期の傑作「土間の家」の所有者の新たな住まい。同じ敷地に「土間の家」と共に中庭を構成するように配置されています。こちらはカラマツで造られた板倉の家です。間もなく竣工してから10年がたちますが、内外とも本当に良い飴色の建築になってきました。

是非、本文をご覧ください。ご希望であれば冊子をお送りしますので、ホームページよりお知らせください。

 

 

2023年2月19日

冬の庭での出来事

カテゴリー: 暮らし

突然「ボッン」という大きな音が我が家の土間のあたりで鳴り響きました。何の音だ!屋根の雪の塊が瓦の上を滑って落ちた音?でもないし(もう屋根に雪はない)、家の中も物が落ちたようなことはなく、何も変わってはいない?分かった!土間のガラス引戸の外に小さな鳥がひっくり返っている。小鳥がガラス戸に激突したのでした。最近はなくなったのですが、以前は庭に来ている鳥がガラス戸を認識できず激突することが数回ありました。今回は網戸を開けていたので庭の残雪がガラス戸に映り込み庭側から見ると庭が家の中にも続いているように見えていました。

 上の写真は、脳震とうを起こし気絶してひっくり返っていましたが、しばらく経って小鳥が起き上がったところ。

どうやら骨折もなく無事らしいけれど、まだ動けません。

図鑑を調べてみると「シメ」というアトリ科の冬の漂鳥とありました。スズメよりちょっと大きなずんぐりした体形。北海道で繁殖し冬は南の暖かい地方へ移動する、国内で短距離の渡りをする鳥でした。よく見られる鳥らしいですが、私は初めて知りました。野良猫などに狙われないよう見張りながら外に置いておくと、しばらくしてまず庭の木の枝に飛んでいきました。大きな怪我もなく飛べるようです。そのうちにどこかに飛んでいきました。良かった良かった。ガラス戸は網戸や障子を閉めて、鳥がガラス戸を意識できるよう皆さんも気を付けましょう。

2022年12月31日

2022年も大晦日になりました。

カテゴリー: 設計について

令和4年 もあと僅か。アッという間に1年が過ぎてしまいました。10月以降、月末になると忙しくなり暫くHPの更新が疎かになりました。10月以降お伝え出来なかったものをまとめます。

7月の記事「板倉の家 上棟」の家は、無事竣工しました。なだらかな丘の上に敷地の高低差に沿ってスキップフロアで構成された住宅です。造成などせず敷地の自然地形を尊重し、なるべくそれを壊さないように考えられた建築です。人工的な敷地造成、特に盛土などは年月が経っても不安定なものなのでやむを得ない場合以外はなるべく避けたいものです。今後、竣工写真が出来ましたら改めてお伝えします。

また、もう一つコンパクトな平屋の板倉の家が上棟しました。

この住宅もちょっと敷地がアプローチより上がっていて高い所にあります。そのため基礎の一部を深くして南側の擁壁に建物の荷重を掛けないように考えられています。北側の母屋の陽当りを確保し視覚的な圧迫感を和らげるため、また母屋への出入りの車に、この建物の軒先が邪魔にならないよう変形した寄棟の屋根の形となっています。年明けに造作工事に入っていきます。

2022年は国内的にも世界的にも激動と言ってよいほどの事象が続きました。来年こそは穏やかな一年となりますよう祈りたいと思います。

それではよいお年を。

 

2022年9月29日

木の家 完成

カテゴリー: 設計について

2月に上棟の様子をお知らせした木の家の完成です。

コンパクトな総2階建ての家でも全体的に高さを抑え安定した好ましいプロポーションとし、周囲に威圧感を与えないヒューマンスケールの建物です。

自然素材 無垢カラマツ板無塗装の外壁がいい飴色になり周辺の田園風景に調和しています。水に強いカラマツの自然な色ですが周りに木の外壁の家がないので結構目立ちます。塗装も何もしないので、その土地の風雪を受け年月と共にその土地の色に染まり、さらに自然な佇まいの家になっていくことでしょう。

玄関ポーチの風除けは、同じ外壁材を使い編み物のような柔らかい雰囲気に。

玄関は板土間で、泥んこ遊びをした子供の服とか、泥のついた野菜など汚れものを洗うシンクがありテラス戸ですぐ庭へつながります。今回の内装は、針葉樹合板。

キッチンは合板で大工さんが製作したもの。辷出しの窓は、南側の庭の向こうの風景を切り取ります。

広間もテラスを介して庭と繋がり、大きなサッシュで雄大な風景を楽しめます。

階高を抑えた2階は、ロフトのような雰囲気ですが、屋根の形がそのまま現れ空間に変化があるので、あまり狭さを感じません。

内外に木を現した家族と共に時を刻む家です。

2022年7月29日

板倉の家 上棟

カテゴリー: 設計について

板倉構法の家の建て方が始まりました。

土台を敷き柱を建て1階の壁をほぼ落し終えたところです。床の断熱材もすでに敷きこまれています。真ん中の紙で養生された太い通し柱が、家の構造の中心となる大黒柱です。柱や梁、壁の落し板等すべてが無垢の地域材カラマツです。

この家は緩やかな傾斜地に建つので、その傾斜に合わせ手前の部屋部分の床を一段下げたスキップフロアの構成となっています。

床の梁を組み管柱を建て壁の厚板を柱の溝に落とし込んでいきます。壁の厚板は1寸厚(3cm)の無垢材です。ここでは、厚板を4~5枚縦につなぎパネル化したものを落し入れて、1枚ずつ落すよりもスピードアップしています。

床や屋根も同じ無垢の厚板を使って貼ります。同じ規格の厚板を壁や床・屋根等に大量に使うので、材料の種類が減り材料生産と現場施工の効率が上がります。材料の無駄もなくなり無垢材の家としてはコストダウンができます。

厚板を様々に使いまわすことにより細かい下地が不要となり、現しの構造体となるので太い柱・梁だけで家を構成でき、増改築や解体移築も容易となります。

数十年、半世紀後であってもこの家の材料は無駄にならず次の時代に引き継ぐことができ、最後の最後には地球環境を汚すことなく土に還っていきます。

もちろんシックハウスとは無縁で新建材にはない調湿作用が充分働くので、住み心地は抜群。地球にも住まい手にも優しい板倉の家です。

2022年6月30日

百舌鳥の子育て

カテゴリー: 暮らし

毎年6月には我が家の庭で、モズが子育てを行います。なぜか我が家に燕は寄り付きませんが、その代わりモズが巣をつくり子育てをしています。

写真は6月中旬の様子ですが、ヒナはかなり大きくなり小さな巣からはみ出しています。親鳥はつがいで忙しく餌を運んでいて、この数日後には巣立ちをしました。巣立ちをしてもヒナはうまく飛べないので、巣の近くの藪の中にいてまだ親から餌をもらっています。

人間や猫が巣に近づくと親鳥が「チチチチチチッ」とおおきな警戒音で鳴きます。この巣の場所は下の写真の我が家の玄関脇のマサキ生垣の中。昨年は、庭の木に作りましたが今年はまた一昨年と同様玄関の近くの生垣の中に作りました。

モズもツバメと同じで、天敵のヘビやカラスなどから巣を護るためには人間が生活行動している場所の近くのほうが安全と学習したのでしょう。

ツバメは近所の家の軒先などで子育てをしていますが、私の設計した家は、外壁がカラマツ板なので、どうもツバメに嫌われるようです。山の別荘でも、隣の杉の外壁にはキツツキが穴をあけるのに、私の設計した家のカラマツ外壁は何ともありません。カラマツの脂を鳥が嫌うのか、今までに鳥害を受けたことはありません。鳥に理由を聞いてみたいと思っていますが。

モズの子育てが終わると、毎年生垣の剪定を行います。