美し松山荘の増築棟です。新たに居間を一部屋増築しました。もちろん母屋と同じカラマツ板倉の家です。増築用の敷地は、水平な土地がありませんでした。造成して平らな土地を造ることはよく行われていますが、造成費がかかります。また、特に盛土の造成は地盤として不安定ですし、景観上も不自然です。建物を建てる敷地は、自然のまま、あるがままの状態が、安定していて景観的にも好ましいはずです。そこで、この板倉の家は自然の土地形態をなるべく残し、建物の基礎の工夫で斜面に対応させています。建物は母屋の子供のような形態として、仲良く並んで建っています。
母屋からの渡り廊下:狭い斜面につくるため、太いコンクリートのピア(1本柱)の基礎に鉄骨架台をのせ、その上に木造の渡り廊下を造っています。敷地の自然地形を乱さない最小限の基礎となっています。母屋の屋根の雪がスムースに落ちるよう片流れの屋根とし、母屋の部屋の採光を妨げないよう、大きな窓を付けています。
建物内部は、もちろん板倉づくり。無垢のカラマツ厚板と漆喰による自然素材のみの家です。
骨組は、母屋と同じ木造伝統構法。太い梁組で丈夫な架構を造っています。天井は張らず構造体を隠さない建築です。吹抜けのような空間となるため、やはり母屋と同じ、電動ファンによる簡易床暖房となっています。
上写真:天井付近の暖気を吸込むダクトとファン。これで床下全面に暖かい空気を吹き込みます。
下写真:窓のコールドドラフトを防止する床スリット。床下の暖気は最後に集められ、テラス窓の前の床スリットから吹き出します。
間接照明:一部屋だけの増築で、部屋の形が単純であるので照明光の分布がコントロールしやすい建物です。そこで部屋全体に調光可能な間接照明を付け、いろいろな雰囲気を演出できるようにしています。骨組みを表したインテリアでも、このように間接照明を付けることが可能です。
部屋は大黒柱を中心としたシンプルな正方形平面ですが、各コーナーを家具で雰囲気作りをしています。丈夫で手を入れやすく、安全な板倉の家は、みなさん暮らしのベースにふさわしい建築です。