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2020年11月25日

板倉の家 上棟

カテゴリー: 現場だより

伝統的構法の板倉の家の建て方を行っています。大きな台風・水害に見舞われた昨秋でしたが、今年は台風はほとんどなく天候に恵まれ、建て方は順調に進みました。

まず1階の柱を立て、柱に刻まれた溝に壁の厚板をコンコンと叩きながら落とし込んでいきます。

1階の壁がどんどんできていきます。

これが壁や床・屋根になる無垢のカラマツ厚板です。もちろん100%国産地域材。長さは工場であらかじめカットされているので、現場ではただ落とし込むだけ。地域の森の木を大量に使って林業を活性化させ、地域の職人の手作りなので地域経済にも潤いが生まれる。日本の人と環境を護る板倉構法の家です。

そして梁・桁を載せていきます。

2階の床組(根太)を取り付けて、2階の柱を建て同じように壁の厚板を落とし込みます。

1階と同じように屋根の梁を載せ垂木を取り付け屋根板(野地板)を取り付けます。

無垢の板に囲われた2階の部屋の様子。自然素材のみの空間が現れました。

無垢の木だけで造る板倉の家の上棟です。合板やボードに頼らず芯の芯まで自然素材の家です。

2020年10月29日

板倉の家 現場

カテゴリー: 設計について

板倉構法住宅の現場が始まりました。基礎コンクリートが打たれ、型枠を外しています。

コンクリートのきれいなベタ基礎が現れました。型枠は、金属のメタル型枠。合板の型枠よりも多数回使いまわしがきき、表面が平滑なのできれいな仕上がりとなります。しかし、合板の型枠のように切断加工していろいろな形の基礎に対応することはできません。今回の基礎は、平面に細かい変形箇所がなく、理想的な形の間取りでしたので効率よくメタル型枠が使われました。

そして、基礎工事の間に構造材の材木の加工がおこなわれています。

今回は伝統的構法の建物ですので、梁や柱の加工はプレカットのマシンではなく大工さんが1本々手刻みで行っています。それぞれの木の性格を読みながら、木と対話しながら加工してくれます。機械での効率的な加工にスピードは及びませんが、自然からの贈り物である木を大切に扱うことで、永く住み継ぐことのできる温かみのある木の家になります。

加工が終わると、いよいよ板倉構法の建て方となります。

2020年9月17日

板倉の歴史

カテゴリー: 設計について

今回は、板倉構法のルーツを探してみましょう。

 これは皆さん「校倉(あぜくら)造」としてご存じ の東大寺の正倉院です。奈良時代に建てられた、古代の美術工芸品の一大宝庫で、もちろん国宝、世界遺産でもあります。校倉造とは、三角形の校木(あぜぎ)という木材を井桁に積み重ねて外壁を造る構法で、写真の横ストライプの外壁でよく分かると思います。

とても大きな建物で3つの部屋に分かれていて、向かって右から北倉(ほくそう)中倉、南倉と呼ばれています。よく見ると外観写真の真ん中部分(中倉)は、校倉造ではありません。中倉は厚板を柱の溝に沿って落とし込んだ「落し板倉構法」です。この中倉は後の時代の増築との説もありますが、部材の木材年代測定から北倉・南倉と同時期のものとの説が有力です。

有名な話に、正倉院の校倉の壁は湿度が低いときは校木(あぜぎ)が乾燥収縮し、隙間ができて風が通り室内を乾燥させる。湿度が高いときは校木が膨らんで湿気を遮断するので室内環境が安定し何百年も宝物を護ることができた、というものがありますがこれはちょっと違います。

無垢の木の外壁なので湿気を吸放出するのは確かなのですが、隙間ができて通気することはありません。宝物はさらに唐櫃(からびつ)というの無垢の木の箱の中で保存されたことが良かったようです。

校倉造も広義には板倉構法の一部ですが、「落し板倉構法」はこのように昔から大切な宝物を護る建物に使われてきました。このほか神聖な伊勢神宮も(形態は唯一神明造)壁は「落し板倉構法」です。

これは、私の地元上田市の塩田平にある中禅寺薬師堂です。平安時代末期に造られ重要文化財となっているもので、中部地方最古の建築といわれています。薬師如来坐像を納めた建物で、形態は阿弥陀堂形式一間四面堂といいますが、壁は「落とし板倉構法」です。

上が外壁写真で丸い柱に溝を突き、厚板を落とし込んでいるのがよく分かります。

この他、弥生時代の登呂遺跡や吉野ケ里遺跡などの穀物倉庫も高床の板倉構法によってつくられていたようです。このように板倉構法の堅牢性・耐久性、優れた温熱環境(断熱・調湿)性能は、古代から大切な穀物や宝物を護るために使われてきました。

古の知恵を賢く使い、機械に頼らず快適な住環境を実現するのが現代の「板倉の家」なのです。

 

2020年8月10日

夏の草花

カテゴリー: 暮らし

異常に長かった梅雨も明け、やっと夏らしい日々となりましたが、今度は異常に暑すぎます。この異常続きはやはり温暖化ということなんでしょうけれど。例年の帰省ラッシュは、今年はコロナ禍でありません。異常・異例続きのこの夏ですが、庭の草花は、例年のようににぎやかに咲いてくれました。にぎやかなのはほとんど雑草だけかな。

この朝顔は、ヘブンリーブル―という珍しい種?と家の奥さんが申してますが、ゴチャゴチャな咲き方で、せっかくのさわやかなブルーが活かされていない。今度はちゃんとした棚を作ってあげましょう。

他にも雑草と競争しながら、たくましく咲いてくれて目を楽しませてくれます。

2020年6月30日

林野図書資料館

カテゴリー: 設計について

林野庁をご存じでしょうか。日本の森林の保全や林業の発展などに関する国の組織です。

霞ヶ関にある国のお役所というと、なんだかお堅いイメージですが、林野庁のホームページには、硬い文章ばかりではなく、木の楽しいお話もたくさん載っています。

今回は、木の種類をマンガで学んでみましょう。

これだけ樹木についての知識があればすごいもんです。読んでいて飽きない。私としては、カラマツの頁も欲しかったけれど、造り酒屋の杉玉の色の変化が日本酒の熟成具合を表わすなどは知りませんでした。 是非ページをめくってみてください。

https://www.rinya.maff.go.jp/j/tosyo/attach/pdf/event-25.pdf

林野図書資料館 本の森 「リン子の絵日記」から。(農水省リンク通知済)

2020年5月25日

薪ストーブ メンテナンス

カテゴリー: 暮らし

新緑の5月 皐月を迎え、薪ストーブもシーズンオフとなりました。薪ストーブは暖房パワーが大きく、揺らめく炎も楽しめる優れもの。我が家では、メイン暖房として毎冬活躍しています。

でも、シーズンオフには必ず煙突掃除とメンテナンスを行いましょう。これを怠ると、次のシーズン性能を発揮してくれないばかりか煙道火災等を起こしたいへん危険です。薪ストーブによる火災は、ほとんどが煙突掃除を怠った煙道火災だと聞きます。

上の写真は煙突掃除の時、煤が室内に漏れないようストーブをビニールで囲い養生した状態。今、屋根上から煙突の煤を落としています。屋根の上の作業は危険なのでプロに頼んでいます。

煙突(煙道)にこびりついた煤やタールがストーブの中に落ちてきました。煙道でこれに火が付くと煙突が高温になって火災の原因となりますので、きれいに取ります。

また、我が家のストーブは触媒付きのもの。そこもトップを外してプロにメンテナンスしてもらいます。薪ストーブ自体は、単純な構造・仕掛けの機械。だからこそ、しっかりメンテナンスを行わないと気持ちよく働いてくれません。

特にメイン暖房で薪ストーブをお使いの皆さんは、煙突掃除・メンテナンスを必ずお願いします。きれいになると薪ストーブも気持ちよさそうです。

2020年4月25日

コロナ禍

カテゴリー: 暮らし

日本中、世界中 新型コロナウイルスが蔓延し、大変な状況になっています。数か月前まで、人類がこのような状態になるとは全くイメージできませんでした。改めて、感染によりお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りするとともに、感染のリスクの中、献身的な業務を続けておられる医療関係者、保健関係やその他日常生活を支えていただいている全ての方々に感謝申し上げます。誰もが当たり前の日常の大切さを、かみ締めていると思います。

さて、今年は記録的な暖冬だったにもかかわらず4月に入り寒波が何度も押し寄せ、ここ真田では今朝も氷点下の気温でした。早く咲き始めた桜も満開になるまでずいぶん時間がかかり、こちらではやっと満開となりました。

毎朝、河原の畑に行く途中お参りする小さな祠(山の神)の桜もやっと満開となりきれいに咲き誇ります。寒気のせいで花が長持ちしていますが、今年はお花見などできる状況ではなく、寂しさが漂いますが、例年通り咲いてくれた桜の花に癒されます。

早くこのコロナ禍が収束し、当たり前の日常が来るようにお願いし畑に向かいます。来年は、皆でお花見ができ春の喜びを表わせるよう願っています。

2020年3月30日

春の作業準備

カテゴリー: 暮らし

世界中に新型コロナウイルスの惨禍が吹き荒れています。そして、ここ真田の地では昨日は今シーズン最深の大雪に見舞われました。家でおとなしくしていなさい、と地球からの警告でしょうか。五輪・パラリンピックも延期となり、世の中暗い話題ばかりですが、開けない夜はない。誰の上にも日はまた昇る。前を向いて進むしかありません。

さて、 昨年の台風での倒木処理もやっと終盤。道をふさいでいた最後の大物を片付けます。

その前に、チェーンソーのメンテナンス。チェーンソーはソーチェーン(歯のチェーン)の切れ味が命。歯が研がれているか否かで、作業効率が全く違ってきます。なので、私は伐採前にはほぼ必ず目立てをします。最初の写真は土間での様子です。外が寒くても、土間には明るい日差しと薪ストーブの余熱があります。油や泥に汚れるこういうメンテナンス作業に土間は便利です。

私も初心者の頃は、農協などに目立てを依頼していましたが、ヤスリなどの目立て道具をそろえ自分で行うようになりました。目立て用クランプでガイドバーを固定して丸ヤスリで一つ一つのカッター(歯)を研削していきます。

写真は丸ヤスリにヤスリホルダーを付けています。これはソーチェーの種類によりカッターの目立て角度が違うので、ヤスリホルダーの角度ガイドを見ながら目立てをするためです。このカッターは30度。この角度でヤスリを前方に軽く押し出し1か所1か所目立てをしていきます。ちょっと根気がいりますが、森林組合のプロの方などは、大木1本伐採する度にその場で目立てを行うと聞いたことがあります。

このほか、混合燃料(私は自分でオイルとガソリンをミックスし作っています)やチェーンオイルの準備などをしっかり行い安全に気を付けて作業を行います。それでは、伐採に行ってきます。

 

2020年2月4日

立春 テラスのテーブル

カテゴリー: 暮らし

早いものでもう令和2年(2020年)も立春。あっという間に節分となり如月に入りました。

今年は、異常な暖冬でここ真田でも雪がほとんど降りません。朝早くからの雪掻きをしなくてよいので、楽は楽なのですが。例年だと大雪となりそうなお正月や大寒に雪ではなく雨が降っていました。温暖化もとうとうここまで来たかという感じです。アマゾンや豪州の森林大火災も正常な地球の気象なら起こりえないような規模だと思います。今年の夏は、オリ・パラもあるのに温暖化による異常気象が心配です。昨年のような豪雨災害がないことを祈るばかりです。

さて、この季節でも外作業ができるくらい暖かいので、我が家のテラスのテーブルと椅子をリニューアルしました。今までは、古くなった屋内用のダイニングテーブル(ポリ合板の天板)を使っていたので、天板のポリ合板がはがれ、下地合板が紫外線と雨によって劣化しガサガサになっていました。

そこで、テーブルも椅子も脚部分は今までのものを再利用し、天板だけカラマツの無垢厚板(板倉の家で使用する壁の落とし板と同じもの)にリニューアル。これで、雨にぬれても直射日光にさらされ続けても大丈夫。このテラスの床やベンチも同じカラマツ厚板、15年以上の耐久性は実証済み。無垢の木材は直射日光や風雨に長年曝されても強度は変わらず、ただ味わい深くなるだけです。合板や集成材などの新建材には、この耐久性とエージングの美はありません。

カラマツ無垢厚板1寸(3cm)の断面。板倉の家の壁や床・屋根と同じ材料。板倉の家の厚板は、このように簡単な家具製作などDIYにも応用できる、ちょうどよい厚み。

椅子の座面も取り替えました。これで、もう少し暖かくなればBBQをしたり、風呂上がりにゆっくりビールを飲んだりと、半屋外のテラスを楽しめます。

 

 

 

2019年12月26日

自然食品のお店 竣工 

カテゴリー: 設計について

以前お知らせした店舗併用住宅が、外構も終了しすべて完成し竣工写真ができましたので、お知らせします。

自然食品のお店ですので、建物も自然素材の建物です。外壁は無塗装のカラマツ板とシックイ塗。床は、敷き瓦や自然石の洗出し。スギの骨組みは、伝統的構法で大工さんの手刻みです。 ここは外壁の一部が市街地の防火規制にかかります。そのため通常は防火サイディングなどの外壁になりますが、板倉構法の防火仕様壁としたため、外壁は無垢の板張りとすることができました。

建物の裏側は駐車場ですが、建替え前の家の庭にあったお稲荷様を横の柿ノ木と共に保存しました。ちょうど新しい住宅の玄関と対峙する位置になり、住宅のアプローチが豊かになりました。

お稲荷様の周りの石も以前の庭にあったものです。後ろのコンクリート打放しの囲いも硬い表情にならないように、高さを抑え端部を斜めに切り落としています。新しいお店を優しく見守っていただけると思います。

住宅の玄関は、建物の裏側です。手前のカラマツ板竪張りの小屋は物置で、勝手口と向合い生活の雑物を収納するとともに、勝手口を隠す塀の役目をしています。

お店の中は、大きな空間とするため、大黒柱に松の大梁を掛け『新しいけれど懐かしい』古民家再生のような空間になっています。現代の照明を使い伝統構法の空間に新鮮さを与えています。商品棚も木製として自然食品のお店にふさわしいナチュラルな雰囲気を出しました。丸太の大梁の下に筋違が見えます。その向こう側が、お店の自然食品を使った料理教室を開くオープンキッチンです。

オープンキッチンの大きなアイランド型ワークトップは、スギの三層ボードを使い大工さんが簡単に作れるシンプル・オープンな設計。お店と同じく、天井を張らないゆったりした明るい空間です。夏は冷房の効きがよく、冬も外断熱とシーリングファンのおかげで足元も寒くありません。

大きな無垢の木のテーブルは、作った料理をみんなで囲むことができます。

お化粧のコーナーも充実しています。

住宅の広間です。ここも天井を張らず厚板の屋根野地板表しのゆったりした空間で、適度に変形しているので、ピアノの音がよい響きです。この野地板の上に厚い外断熱材と通気層があるので、この夏も快適でした。小上りの和室は予備室を兼ねます。

住宅のキッチンも大工さん手作り。シンプルな玄関には、陶板や絵がそっと彩りを添えます。

『建物はシンプルに、素材はナチュラルに、雰囲気はカジュアルに』しみず建築工房のコンセプトを体現する建築で、人懐こいこの家の猫が満足そうに見送ってくれました。